フレンド薬局通信 2024年04月

No. 117 親知らず

暮らすlife

一番奥にある臼歯のことをなぜ「親知らず」というのだろうか。それは親が子供の歯の生えかわりに興味がなくなった年代、成人した頃になって生えてくるからだ。分別がつくようになってから生えてくるので、英語では知恵の歯=wisdom tooth、日本語でも智歯(ちし)と呼ぶ。

若い頃親知らずを抜くように勧められた方もいるのではないだろうか。親知らずが正常な方向に生えていて上の歯とかみ合っていれば、抜くことはないと考えられる。 しかし親知らずが斜めに生えている、顎の骨に埋もれて症状がある場合には悩ましい。しかもそういうケースが多いのだ。ものをかむのには関係しないが、将来トラブルが起きる可能性がある。 例えば親知らずがその手前にある第二大臼歯に接していると、間に細菌がはびこり、気づかないうちに慢性の症状が起こりうる。歯周病が進んだり、第二大臼歯まで虫歯になったりする場合がある。

年齢を重ねるとともに、親知らずを抜くのは大変になっていく。難易度は埋もれている状態によって変わるし、歯根の数や形の異常、歯の周辺の骨の硬化なども影響する。なかでも炎症や加齢によって骨の硬化や親知らずとの癒着が進むと、抜くのが一層難しくなる。 さらに言えば、抜歯によって神経に影響が出て、下唇のあたりにまひが生じるリスクもある。

抜歯するか否か、判断する際にひとつの目安となるのが腫れや痛みを繰り返しているかどうかだ。歯科以外で使っている薬にも注意する必要がある。脳梗塞や心筋梗塞などの治療で血液をサラサラに保つ薬を処方されたり、骨粗しょう症やがんの骨転移があって薬を投与されていたりすると、どう処置するかが変わってくる場合がある。

結局はご自身の年齢や痛みなどの症状、抜歯によるリスクや抜歯に対する思いなどを考え合わせて決めることになる。高齢化もあり、可能であれば大学病院や総合病院などで早いうちに抜いておいてよいのではと思う。

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